【ニュース】八木西口駅、廃止に一歩近づく

今日3月5日の奈良新聞朝刊で、近鉄八木西口駅の廃止に向かって動いていることが報じられました。

八木西口駅では以前からあった近隣の新駅構想に伴って、地元側が近接する八木西口駅も維持してほしいと要望。その後に新駅か八木西口駅かの二択まで絞られ、協議はさらに続行となっていました。近鉄は近隣に設置される新駅へ八木西口駅を統合する方針を固めているようです。

しかし実のところ、時間的にはまだまだ大丈夫そうでもあります。

八木西口駅とは

八木西口駅近鉄橿原線の中間駅で、1日5000人程度が利用するというそこそこの規模を持ちますが、扱いとしては隣の大和八木駅の「構内」とされています。そのため、営業キロも設定されておらず、運賃などは大和八木駅と同じもので取り扱い、乗降人員の統計も公式には発表されません。(実用上は困らないとは言え、かつては運賃表などに名前がなかった時代があるほど……)

そこそこ利用されているのに、どうしてこんな特殊な状態なのかといえば、もともと八木西口駅大和八木駅の前身のようなものだったからという歴史的な経緯、そして大和八木駅から八木西口駅まではたった400mしかないという位置関係的な理由があります。

もともと、八木西口駅近鉄橿原線の前身である大阪電気軌道畝傍線の八木駅」として開業しました。それからしばらくはこちらが八木町(今の橿原市)の中心駅だったのですが、大阪電気軌道桜井線(近鉄大阪線)の延伸で両線の交点にわずか6年で目と鼻のさきに今の大和八木駅が開業。このときも八木西口駅は廃止される予定があったようですが、せっかく町にある駅を利用していた地元からの要望で、法的には大和八木駅の一部として「八木西口駅」と改称し存続しました。*1

どうして廃止に

そして時は流れ、2000年代になり、八木西口駅よりやや南にある奈良県立医大付属病院の近くに新駅構想が生まれました。当然、新駅と大和八木駅にサンドされる八木西口駅の立場は危うくなります。

新駅と八木西口駅の距離は短く測れば700m程度であり、歩けない距離ではありません。とはいえ逆に言えば現在の新駅周辺の利用者は700m歩いているわけで、ならば隣駅までたった400mしかない八木西口駅を廃止して、700m歩く方に駅を設置しようというわけです。

しかし地元としては、利用が定着した八木西口駅の廃止は嬉しくありません。歴史的な経緯から分かるように、駅周辺には市役所本庁舎や畝傍高校など街の顔のような施設が立地し、大和八木駅から歩けるとは言え、あるならあるで便利だからです。

合理性を求める近鉄と、駅の維持も新駅設置も求める自治体の議論は平行線をたどり、最終的には2021年3月に近鉄側が「八木西口か新駅かどちらかだけ残す」と宣告し、地元も折れて原則的にはそれを了解しました。

以降も議論はつづいていたようですが、近鉄側は従来より提案していた「八木西口駅を移転扱いとし、県立医大病院前に統合する」という新駅設置案を方針として固めていたようです。新駅を設置するという前提の協議なのですから、二者択一まで絞られた時点で当然といえば当然の方針です。

そして県知事も今回はっきりと「県の提案(八木西口駅の存続)が成立せず残念だ」と述べたことから、新駅の設置に関する協議に参加する県・市・近鉄の3者で、少なくとも奈良県側は八木西口駅廃止もやむ無しと考えているようであることが伺えます。

本当に廃止?

前提として、三者協議としての報告や近鉄橿原市側のプレスがないため確定ではありません。あくまで県知事答弁の内容は、従来の「2駅の併存はない」という方針を再確認しただけのようにも受け取れます。*2 ただ記事中で八木西口駅と新駅の併存を提案していたが、近鉄側が廃止を強く求めている」と報告され、それに対し八木西口駅のほうを存続させるような確認もないことから、新駅設置関係の三者協議の主体2つが廃止でほぼ方向性を一致させており、結論は廃止の可能性が高いでしょう。

いずれにせよ、近鉄八木西口駅廃止から議論を動かす気はないようです。

駅を廃止するにしても手続きや新駅の建設があり、そう拙速になにかが起きる話ではないのは確かです。しかし遠からず、結論は出るものと見られます。

 

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*1:開設当時の大和八木駅八木町ではなく隣の耳成町の領域にあり、八木西口駅八木町の西部にあった

*2:有料部分では別の政策についての話に移っています